一般社団法人
協創リハビリテーションを考える会
痙性麻痺と弛緩性麻痺について
・運動麻痺を生じると、自分の意志で思うように手足を動かせなくなります。
しかし、ただ動かせなくなるだけでなく、手が曲がったまま固まってしまったり、足が
伸びきってしまって曲がりにくくなっているという現象が生じることが多いかと思いま
す。
・筋肉は神経が正常に働いている場合、ゴムのように弾性を持ち、適度に伸びたり縮んだ
りして筋力を発揮することができます。地球上では常に重力がかかっており、私たちは
重力に抗して姿勢を維持したり、運動したりしています。
そのため、常に筋肉には適度な緊張状態(張力)を持たせておき、いつでも収縮させて
すぐに活動できる状態にしておくことが必要です。この筋肉の緊張状態を筋緊張といい
ます。
・運動麻痺の分類の中に『痙性麻痺』と『弛緩性麻痺』というものがあります。
それぞれの麻痺タイプによって、筋緊張の状態が異なります。
●痙性麻痺とは
脳から脊髄までの神経の通り道が障害された場合に生じる麻痺のことを指します。
脳から脊髄までの通り道には、代表的なものとして皮質脊髄路がありますが、他にも
いくつか神経経路があり、これらは上位運動ニューロンと呼ばれます。
・脳梗塞や脳出血を発症し上位運動ニューロンが障害されると『痙性麻痺』が生じます。
・『痙性麻痺』では筋緊張が亢進します。筋の張力が異常に亢進しているため、他動的に(第三者によって)動かしたときに抵抗感が強いという特徴があります。
・筋肉が自分の意志とは関係なく異常に興奮してしまうので、手が曲がったまま固まった
り足が伸びきって曲がりにくくなるという現象が起きてしまいます。このような状態を
痙縮と呼びます。
●弛緩性麻痺とは
・脊髄から筋肉に到達する間の神経で何らかの障害が生じた場合に生じる麻痺のことを
指します。
・脊髄から筋肉に至るまでの神経は下位運動ニューロンと呼ばれます。
・下位運動ニューロンが障害されると『弛緩性麻痺』が生じます。
・『弛緩性麻痺』では筋緊張が低下します。『弛緩性麻痺』の場合、自分の意志で思うよ
うに手足を動かすことができないのは片麻痺と同じですが、片麻痺の様な筋肉の異常な
反応(痙縮)は見られません。
・下位運動ニューロンを生じる原因としては、”ポリオウイルスによる急性脊髄前角炎”、
”外傷による腕神経叢損傷”、”重症筋無力症”などが挙げられます。