Question

 脳の可塑性とは、どのように理解すれば良いのでしょうか。

「脳は損傷してもある程度、回復すること」と「ある程度の回復で、固定してしまうこと」の両方の意味があるように思えます。

Answer

 

◆『脳の可塑性』とは

脳は外界からの刺激などによって常に機能的な変化、構造的な変化を起こしています。脳内でのこうした神経組織・回路の変化しうる性質可塑性と呼びます。

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脳の可塑性に関して有名な研究の一つに1996年のNudo博士らの研究があります。

この研究では、リスザルの脳に人工的な脳梗塞を作り、それによって麻痺した上肢・手指で、餌をつかみ捕食する練習を実施させたところ、麻痺した上肢・手指の運動機能の回復が見られ、さらに脳の中の手を司る領域での変化も確認できました。

 

では、脳の可塑性はどのようなメカニズムなのでしょうか。

脳の可塑性メカニズムは大きく「局所的変化」と「脳の再組織化」に分けることができます。

 

前者の局所的変化とは、損傷部位周辺の変化の事を指します。

局所的変化には①浮腫の改善②ペナンブラの改善③ディアスキシスの改善があります。

 

①浮腫の改善

脳梗塞あるいは脳出血後は一時的に周辺細胞に浮腫が生じます。細胞自体は生きていても浮腫により圧迫されて虚血状態になり、その影響で症状がでていることもあります。これは浮腫が自然に除かれれば症状改善する可能性があります。浮腫の改善時期は発症後数週間~2か月程度と言われています。

 

②ペナンブラの改善

ペナンブラとは、脳の虚血部周囲の壊死はしていないものの、機能不全の状態に陥っている部分のことを指します。早期治療(血流再開)が行われれば脳機能の回復が期待できるため、tPAなどの治療が有効と考えられています。ペナンブラの改善時期は数時間~数週間程度と言われています

③ディアスキシスの改善

ディアキシスとは、機能解離とも呼ばれます。脳の損傷部位とは隣接していないが、神経線維によって連結されている遠隔で繋がっている部分が一時的に代謝や生理機能が不全となることです。ディアスキシスの改善時期は数日~数か月間と言われています。

後者の脳の再組織化とは、損傷後に脳の構造や機能が変化を指します。代表的な変化として神経側芽、アンマスキングがあります。

 

①神経側芽(sprouting)

神経細胞が損傷されるとその細胞に代わって近傍の神経細胞の軸索から神経線維が伸びていく現象のことです。

                                                                          損傷後、新たな神経経路が繋がり神経ネットワークが再構築

 

 

②アンマスキング

元々神経回路としては接続され存在していたが、普段は神経的に抑制されている神経回路が脳卒中などで神経細胞が損傷することにより、アンマスキングされる(あらわになり、神経回路の伝達が再開される)現象のことです。

 

 

 

 

脳の再組織化は発症直後から始まり、数か月続くと言われています。さらに広範な脳の神経ネットワークの再建化は数年単位で続くともいわれています。

また、脳の神経ネットワークの再建化はリハビリテーションの量や質、難易度調整などが影響を受けやすいことも報告されています。

このように、神経組織・回路が変化しうる性質を『可塑性』と呼び、リハビリテーションにおいてもこうした神経回路の再建等に注目が集まっています。

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