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心原性脳梗塞とは

心原性脳梗塞は、心臓で作られた血の塊が脳に流れ、脳の血管を詰まらせてしまい、脳梗塞を発症する病気です。

 

ここでは心原性脳梗塞の原因、症状、治療、について簡単に説明していきます。

◆心原性脳梗塞の原因は?

心臓は普段、絶えず規則正しいポンプ活動を行い、全身に血液を送り出しています。通常、一分間に60~90回の頻度で拍動します(この拍動数を心拍数と呼びます)。心房細動、急性心筋梗塞、拡張型心筋症、人工弁、心内膜炎、などを基礎疾患として持つ方は、心臓の働きが悪くなり、心臓が規則正しく拍動できなくなることがあります。すると血液の流れが悪くなり、血液がよどみ、そして固まりやすくなってしまいます。血液が固まることで心臓内に血の塊(血栓)が生じます。この心臓で出来た血の塊が剥がれ、血液の流れに乗って血管内を通り脳まで運ばれ、脳の血管を詰まらせてしまうことで脳梗塞が引き起こされます。これを心原性脳梗塞と呼びます。

 

心臓で血栓が作られる原因として、最も多いとされるのが心房細動です。ここで心房細動についてまずは説明していきたいと思います。

心臓は四つの部屋に分かれ、上にある2つの部屋を心房(左心房、右心房)、下にある二つの部屋を心室(左心室、右心室)と呼びます。心臓は外側が心筋という筋肉で出来ており、中には血液がたまっています。そして規則的に筋を収縮させることで血液を全身に送り出しています。心房は心室へ血液を送り出し、心室から全身に血液は送り出されます。そのため、心房細動により心房で動きの異常があった場合でも、実際には心室が正常に活動していれば大きな問題は起こりにくいと言えます。

それでは、そもそも心臓はなぜ規則的に収縮することが出来ているのでしょうか。    心臓にはペースメーカー(歩調取り)と呼ばれる、いわゆる発電所の様な場所が右心房の上方に存在しています。ここできっかけとなる電気が作られます。そして、その電気は心房と心室の間にある房室結節とよばれる場所を通り、心室へ伝わるようになっています。これが、規則的に行われることで、心臓は規則的なポンプ活動を可能としています。しかし、年齢が上がるにつれて心房の筋肉が変質し、電気を伝えにくくなってしまいます。すると、洞結節以外の場所から異常な電気信号が生じ、心房内で電気が痙攣するように渦巻いてしまいます。これを心房細動と呼びます。心房細動は加齢とともに起こりうる病態であるため、誰にでも起こりうる可能性があります。

心房細動の症状としては、「息切れや」、「胸痛」、「疲れやすさ」などが多いですが、無症状の場合もあります。また、手首で脈を測定すると、普段よりも速度が不規則な様子や脈が飛ぶ様子を感じられるかもしれません。心房細動自体が命に関わることはほとんどないと言えます。しかし、心房細動により、心房の中の血液が流れるスピードが低下し、うっ滞(血液がスムーズに流れず滞ってしまう状態)してしまいます。そのため血液が心房の中で固まりやすく血栓ができやすい状態となります。そのため、心房細動は心原性脳梗塞を引き起こす大きな原因と言えます。心房細動を既往に持つ方の場合、心房細動を既往に持たない方と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍高いと言われています。

 

◆心原性脳梗塞の症状と特徴は?

アテローム血栓性脳梗塞は、動脈硬化により徐々に血管内が閉塞していき脳梗塞を引き起こすという経過を辿りますが、心原性脳梗塞は、突然、心臓で作られた血の塊が剥がれて脳の血管を閉塞してしまうので、日中の活動時に突如発症することが多いという特徴があります。また、脳の太い血管を詰まらせてしまうため、脳梗塞になった場合重症になりやすいタイプの脳梗塞です。

また、出血性梗塞という状態になる危険もあるので、注意しなければなりません。    身体には、もともと血管を詰まらせた血栓を溶かそうとする働きがあります。この作用によって血栓が溶けて閉塞していた血管が開き、血流が戻ることがあります。脳梗塞が完成してしまった後に、血の塊が溶けて血液の流れが再び開通された際、多くの血液がもろくなってしまった血管に一気に流れ込むことで、新たに脳出血を起こしてしまうという場合もあります。これを出血性梗塞と呼びます。この出血を起こしてしまうと後遺症がさらに重くなってしまうため、心原性脳梗塞になった直後の血圧管理や薬の調整は治療において重要となってきます。

症状としては脳梗塞になった側と反対側の手足が動きにくくなる運動麻痺(片麻痺)、触られた感覚や温度や、自分の手足の位置がわからなくなってしまう感覚障害、話す・理解するといった言語機能に障害の出る失語症状、その他梗塞の範囲が大きければ高次脳機能障害と呼ばれる多彩な思考・記憶・認知機能の異常症状が出現してしまいます。

 ◆心原性脳梗塞の治療法について

(1)抗凝固療法

心原性脳梗塞心房細動などが原因となり、心臓で血の塊が作られることで発症してしまう疾患であるため、再発予防の治療には血液を固まりにくくする抗凝固療法が通常行われます。抗凝固薬としてこれまで広くワルファリンが使用されてきました。血液を固まりにくくする作用があるので、使用量が多いと逆に出血の危険もあります。そのため、投与の量は血液検査を通して細かく調節されます。

最近では、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、エドキサバン(リクシアナ)の4種の新しい抗凝固薬(新規経口凝固薬:NOACと呼ぶ)が使用されています。それぞれ利点や副作用などを考慮しなければならない点があるため、どの薬剤を使用するかは、腎機能や肝機能、年齢、もともと持っていた既往症(心臓病など)、全身状態を踏まえた上で医師によって判断されます。

 

(2)脳浮腫管理

脳梗塞の範囲が大きい場合、梗塞を起こした細胞の周囲はむくんでしまい、脳内で周囲

の細胞を圧迫し合い、頭蓋骨の中の内圧が高まってしまいます。これを頭蓋内圧亢進と呼び、この場合、高張グリセロール、マン二トールといった薬剤の静脈内投与が行われる場合があります。

 

(3)開頭減圧療法

広範な脳梗塞を生じ、頭蓋内圧亢進を来たした場合、発症48時間以内に外減圧手術が勧められます。外減圧手術とは、頭蓋骨を外し行き場をなくした頭蓋内の圧を外に逃がすという治療法です。

 

◆不整脈の予防について

 

心房細動が心原性脳梗塞の原因として大きいことを述べてきましたが、心房細動を持っている人すべてが脳梗塞を起こすわけではありません。

現在、心房細動患者に対して抗凝固療法を予防的に開始するかどうかを決める際に最もよく使用されている指標がチャッズ(CHADS2)スコアです。

 

 

これは脳梗塞の危険因子である、心不全(C)、高血圧(H)、年齢(A:75歳以上)、糖尿病(D)があると各1点、脳梗塞や一過性脳虚血発作(ごく短時間、手足の麻痺や言葉の障害が起こる発作)の既往(S)を2点として足し算し、合計6点満点として計算します。この点数が高いほど脳梗塞の危険性が高いと考えられています

自覚症状がなくても、脳梗塞の危険因子があり、脳梗塞の既往がある方は不整脈を感じた時点で一度医療

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