アテローム性脳梗塞とは

悪玉コレステロールが血管の内側に溜まり、血管の壁が固くなった状態をアテローム硬化と言います。アテローム硬化は血管を狭め、やがて脳梗塞を引き起こす危険があります。

 

ここではアテローム血栓性脳梗塞の原因から発症した場合の症状、そして治療方法についてまで簡単に解説していきます。

 

◆アテローム血栓性脳梗塞の原因は?

アテローム硬化とは、粥状硬化(じゅくじょうこうか)とも呼ばれ、簡単に説明すると血管の中で悪玉コレステロールが固まっている状態です。

ここで、まずコレステロールについて解説していきたいと思います。コレステロールと聞くと、身体にとって悪者の様な印象を抱く人は多いかもしれませんが、コレステロールとは本来身体にとって必要不可欠な物質です。なぜなら、人を構成する最小単位である細胞を覆っている膜(細胞膜)はコレステロールで出来ているからです。また身体の働きを調節する副腎皮質ホルモンと呼ばれるホルモンや男性ホルモン、女性ホルモンといったホルモンはコレステロールが材料となっています。コレステロールは本来身体にとって必要不可欠なのです。しかし、多すぎると身体にとって問題となります。

コレステロールには『HDLコレステロール』と『LDLコレステロール』があります。『HDLコレステロール』は一般的に善玉コレステロールと呼ばれ、『LDLコレステロール』は悪玉コレステロールと呼ばれています。

身体にとってコレステロール自体は必要不可欠なものなので、体内にコレステロールを供給する必要があります。『LDLコレステロール』は、この全身にコレステロールを供給するという役割をもっています。しかし、LDLが多くなりすぎてしまうと体内で酸化されて、動脈の内側に蓄積してしまいます。その結果血流を滞らせ、血栓を作り、アテローム血栓性脳梗塞を引き起こす危険が出てきます。『LDLコレステロール』が悪玉と呼ばれる理由はここにあります。一方、善玉である『HDLコレステロール』は、身体のすみずみに運ばれたコレステロールを回収するという役割をもちます。つまり、血管からコレステロールを除去する役割をもつので、動脈硬化の防止につながると言われています。これが『HDLコレステロール』が善玉と呼ばれる理由です。病院で血液検査を行い、高LDL血症・低HDL血症の場合、脂質異常症と診断を受ける可能性があります。脂質異常症は、動脈硬化を促進するリスクを持ち、動脈硬化は脳梗塞のリスクを高めるという構図になっているのです。ちなみに、コレステロールの基準値は以下のようになっています。

・LDLコレステロール血症
検査値:LDLコレステロール ≧ 140mg/dl

・HDLコレステロール血症
検査値:HDLコレステロール < 40mg/dl

 

アテローム硬化を引き起こす原因として悪玉コレステロールの増加による脂質異常症以外に高血圧、糖尿病、喫煙、加齢なども挙げられます。これらは、血管の壁を脆くしてしまい結果として動脈硬化を進行させたり、悪玉コレステロールを必要以上に増やしてしまう危険があります。

また、精神的ストレスもアテローム硬化を引き起こす原因の一つになります。ストレスを感じたときに分泌されるホルモンは、血糖値の上昇や血液中の悪玉コレステロールの量を増やす作用を持ちます。そのため、持続的なストレスがかかるとアテローム硬化が引き起こされる原因となります。

 

◆アテローム血栓性脳梗塞の分類

脳梗塞の一つのタイプがアテローム血栓性脳梗塞と説明しましたが、このアテローム血栓性脳梗塞はさらに発症機序から3つに分類することができます。

・塞栓性

アテローム硬化によって狭くなった血管では、その部分の壁が壊れやすくなります。そして、壊れた血管の壁には修復しようと血栓(血の塊)が出来ます。塞栓性とは、この血栓がはがれ、血液によって運ばれて、その先にある血管を詰まらせてしまい脳梗塞が生じるタイプです。

 

・血栓性

血栓性とは、アテローム硬化の進行により血管の壁が壊れ、そこで作られた血栓が大きくなりそのまま血管を詰まらせてしまい脳梗塞が生じるタイプです。

・血行力学性

アテローム硬化により、血管が閉塞もしくは閉塞に近い状態まで狭窄してしまい、この時に脱水や血圧低下などが起こることで、狭窄部より先の血管に行く血液の流れが極端に悪くなってしまうことがあります。血行力学性とは、このようなメカニズムの結果として、血流不足が生じ、脳に充分な栄養や酸素が運ばれず、脳の組織が破壊されて脳梗塞が生じるというタイプです。

 

◆アテローム血栓性脳梗塞の特徴

アテローム血栓性脳梗塞は、首から脳に通じている頸動脈と呼ばれる血管や脳の比較的太い動脈の硬化(アテローム硬化)が原因となって起こる脳梗塞と言われています。太い血管から分岐した細い血管の閉塞による脳梗塞はラクナ梗塞と呼ばれます。

また、アテローム血栓性脳梗塞は睡眠中から起床時に発症しやすいという特徴があるとも言われています。これは、寝ている間は血圧が低下しやすく、気づかない間に脱水傾向になりやすいために、動脈硬化が進行していた場合、この間に脳の血流量が減り、血栓が血管内に詰まりやすくなるためと言われています

症状は、詰まった血管の場所により異なってきます。より頸部に近いところで血管が閉塞した場合、症状は重度となります。

 ◆アテローム血栓性脳梗塞の治療法について

脳梗塞発症直後の治療法として以下の様な治療方法があります。

(1)血栓溶解療法

プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA)と呼ばれる薬剤を静脈内投与します。いわゆる、血管を詰まらせている血栓(血の塊)を溶かす治療です。

この治療の適用は発症から4.5時間以内の場合と現時点では定められています。さらに、4.5時間以内に病院に運ばれても、細かな項目を満たし、医師が慎重に適応と判断した場合のみの適応です。適応と判断された患者に対しては、強く勧められる治療法です。

(2)抗血小板療法

アテローム血栓性脳梗塞の場合、血栓が出来にくくなることを目的とした抗血小板療法という治療も行われます。発症してから2日以内の早期にはアスピリンの内服が推奨されており、5日以内であればオザグレルナトリウムという薬での治療も推奨されています。

(3)脳浮腫管理

脳梗塞の範囲が大きい場合、梗塞を起こした細胞の周囲はむくんでしまい、脳内で周囲

の細胞を圧迫し合い、頭蓋骨の中の内圧が高まってしまいます。これを頭蓋内圧亢進と呼び、この場合、高張グリセロール、マン二トールといった薬剤の静脈内投与が行われる場合があります。

(4)開頭減圧療法

広範な脳梗塞を生じ、頭蓋内圧亢進を来たした場合、発症48時間以内に外減圧手術が勧められます。外減圧手術とは、頭蓋骨を外し行き場をなくした頭蓋内の圧を外に逃がすという治療法です。

(5)頸動脈内膜剥離術

頸動脈と呼ばれる首から脳につながる動脈部分に狭窄がある場合、動脈を切り開いてアテロームを取り除くという治療法が考慮される場合があります。

(6)頸動脈ステント留置術

ステントという金属を血管内に留置させることで狭くなった血管を広げる治療方法です。

(7)その他

アテローム血栓性脳梗塞は、生活習慣の乱れによって発症するリスクが高まります。また、脱水や血圧の低下も脳梗塞を引き起こすきっかけになるため、血圧管理や夏季・夜間などは特に小まめな水分摂取が、予防・再発防止には重要になってきます。